当店の桑茶
当店の桑茶 お茶屋ですから‥
当店では平成七年から桑茶の生産を始めました。その前年に神奈川県の桑についての研究成果が発表され、そのレポートを当地の研究機関(宮崎県食品開発研究センター)を通して入手し、桑の葉の持つ有用性に強く興味を引かれたのが直接のきっかけです。
仕事柄お茶の保健効果について鎌倉時代の栄西禅師による「喫茶養生記」(栄西禅師が中国で学んできた保健飲料の利用を勧めた本)のことは知っていましたが、その第一巻はお茶のことで、第二巻には桑を主としてその他の草木の保健効果が述べられています。それもあって比較的桑を飲料にするということには比較的抵抗感もなく取り組めたのかもしれません。
桑茶の製造については、当店は百年以上続くお茶屋ですから、できるならそこにもお茶屋としての味と香りへのこだわりを持って臨みたい、ということで従来の日干しの桑茶製法ではなく、緑茶の製法を応用してみようと工夫しました。
最初は文字通り試行錯誤しながら作り始めました。お茶の製法といってもお茶にも煎茶や玉露や抹茶、釜炒り茶、玉緑茶などいろんな種類とそれぞれの製法があるのでして、その中からどんな製法がいいのか、あるいはいくつかの製法を組み合わせてみたり手探りの連続でした。もちろんそのための機械設備などあるはずもなく、小さな「押し切り」で桑の葉を刻む所から始めました。そして次第に専用の機械として従来お茶に使っていた機械を転用したり別途農機具屋さんから中古を取り寄せたり、そしてそれらに改造を加えたり、それでも足りないときは鋼材問屋さんから材料を買ってきてそれを自分で切ったり付けたりそれにモーターや配線など取り付けたりして機械をこしらえ、それらでどうにか自分なりの桑茶の製造ラインらしきものをこしらえて、今に至っています。
原料から乾燥桑茶を作る一次加工、出来上がりを真空包装してダンボール箱に詰めての保管、そして最後に「ティーバック」に加工したり、再度小さな茎や葉脈を取り除いて石臼で挽く「桑粉末」といった二次加工を加えて、ようやく出荷となりますが、それらのひとつひとつにまた創意工夫と改善を加えながら取り組んでいます。
桑の効用については調べれば調べるほどそのすばらしさに感心してしまいますし、実際にご利用下さっているお客様方からもそれぞれの暮らしの中で役立てていらっしゃるご様子など伺いながら、最近では「飲んで落ち着く」とまで言われたりしてその度に作り手としての喜びを味わっております。
畑の方も最初から「無農薬」でお願いしていますが、いろいろな方々のご縁を得て今年から有機農業と照葉樹林で知られる綾町の紬工房の良質な桑の葉も原料に使えるようになり、より一層の品質向上を図っております。
これからも、幅広い年代の方々に、おいしく飲めて元気な生活作りに役立つ桑茶ができることを楽しみに「味と香り」にこだわり続けたいと思います。
- 2010.09.15
- 15:47
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